【感想】⑥シンデレラ特急は知っている
※ねたばれあります。
KZ事件ノートシリーズ第6作目。
本当は、出版された順番に読んでいこうと思っていたのですが、夏休みにそれっぽいものを読みたくなり、こちらを選択。
大人の夏休みの課題その1です。
Deep File、Upper Fileは夏っぽいものが多いのですが、少年の苦悩よりもエンタメを選びました。
サッカーチームKZのフランス遠征を利用して、探偵チームKZもフランスへ行って活躍しよう!という若武の提案から物語がはじまります。
大サービス夏休みスペシャル ってとこです。
シンデレラ特急とシンデレラの城は、実際に7月、8月に発売されています。
商業的な理由ももちろんあると思うけれど、子供たちに夏休みを楽しんでもらいたいという作者や出版社の気持ちが感じられて、こういうの、とてもすきです。
コバルト文庫でも夏に「ひとみWorld夢辞典②」が発売されて、その中で掲載されていた「白鷹どりいむ」が夏っぽさ満開のお話だったように記憶しています。
冷泉寺さんが避暑に行くお話で、ちょっと不気味な殺人事件。
冷泉寺さんもてるの巻。
当時は今よりゆるい時代だったため、未成年飲酒のシーンがあります。
そのときのセリフ
「弔い酒だから、いいんだよ」
がかっこよくてとても印象深い。20年以上経ってもおぼえています。
同じく夏に出された「ひとみ愛ランド」掲載の「銀狼より愛をこめて」も夏でした。
鈴影さんがヒロシと光坂くんに、作家にオーダーしたカップを取りに行くよう頼むお話。
オーストリアかどこかだったかなあ。
作家の名前は、たしか ルードリッヒ・リィ。
若武が、塾の理事長に交渉して、KZ応援団を作らせたという。
すごいです。
ネゴシエーター若武。
ネゴシエーターのおかげで、アーヤはKZ応援団に入ることができ、フランスへも行くことができるようになります。
しかも、秀明が費用を負担!
「『事務所だと、土曜日でないと集合できないだろ。遠いからね。』」(P.55)
若武の家から塾は遠いって、消えた自転車でも言っていました。若武が。
上記の発言は小塚君のものですが、設定に一貫性があります。
「若武はフォワードでハデな立場」(P.130)
このときは若武フォワードなんです。
私、サッカーはまったく詳しくないのですが、トップ下って、ミッドフィルダーのことですよね?
若武が怪我をしてトップ下を外されて・・・ みたいな時期ありましたよね?
ポジション変わったのでしょうか。
ミッドフィルダーって言うと「翼(つばさ)よ、ミッドフィルダーになれ」を思い出します。
もしかして若武、翼くんにあこがれて・・・?
「若武に電話をすると、お手伝いの島崎さんが出るし、上杉君ちはママが出る、黒木君の所は、たいてい留守電で、本人が出るのは小塚君だけなんだもの。」(P.153)
このころは、まだみんな携帯電話持ってないっぽいです。
と思ったら
「黒木君の携帯番号は、教えてもらってない。」(P.229)
とあったので、黒木君は携帯、持っていました。
「『このあたりは、中央高地と呼ばれる山岳地帯で、日本でいうと長野県みたいなところらしい。』
私は、長野県を思いうかべた。
おばあちゃんの家が長野県だったから、時々行ったことがあるんだ。」(P.190)
KZシリーズには、長野県がよく出てきます。
Deep Fileでも、Upper Fileでも、舞台になっています。
先生の出身地だからに違いありませんが、長野を書かれるようになったのも、コバルト時代にはなかったことで、望郷の念?なんて思ったり。
それにしても、短期間(1か月もなかったはず)でフランス語をマスターしたアーヤ・・・
同時通訳までできるというすごさ。
天才です。
小塚君の天才ぶりも相変わらずで、庭に生えている草から催眠作用のあるものを見つけるっていう・・・
しかも煮出して催眠薬を作る・・・
メンバーそれぞれの仲良しぶりが発揮されているように思いました。
異国の地で団結が強まった部分もあるのかも。
黒木君と上杉君Ver.
「黒木君と上杉君は、とても親しい・・・・・・みたい。
でもくわしいことは、わからないんだ。」(P.92)
「『おまえら、2人で大丈夫かよ。』
黒木君と上杉君は顔を見合わせ、ふっと笑った。
『あたりまえ。』
『だよな。』
むしろ、2人の方がやりやすいといったような表情だった。
いつも、仲いいもんね。」(P.547)
いつものいちゃいちゃです。こういうのすきです。
上杉君と若武Ver.
「あんまりにも情けない顔つきだったので、さすがの上杉君もかわいそうに思ったらしく、手を伸ばして、若武の頭をそっとなでてやっていた。」(P.708)
今までこんなことありました?
かわいいー!
なでてる上杉君も、なでられてる若武も、かわいいー!
上杉君が、アーヤと呼びます!
「『どうせ言葉が通じないんだから、ここは子どものいたずらとしてごまかそう。アーヤを出さない方がいい。こいつに顔を覚えられたら、危ないかもしれないぞ。』」(P.365)
「『アーヤに頼もうぜ。』
上杉君が言った。
『人の心を読んで、そこに分けいっていくのも国語の力だ。あいつに接近できるのは、アーヤしかいないよ。』
それは、上杉君が初めて、みんなの前で、私の力を認めた瞬間だった。」(P.722)
みんなの前で力を認めただけじゃなくて、みんなの前でアーヤと呼んだのも初めてなんじゃないの~!?
みんなのパジャマがいろいろとすごい件。
イラストもあってたのしいです。
若武のうさみみナイト帽は、美髪の秘訣だったりして。
黒木君なんて、素肌の上にガウンで出てきたってことは、裸で寝てるんですよね、きっと。
ハ・ダ・カ!
みんなのそんな姿を見てもまったく動じないアーヤ、すごいです。
スケールが大きくてダイナミック、スピード感もあり、あっという間に読ませる作品。
フランスが舞台で、このスピード感。
「愛をするアンテロス」あたりのマリナシリーズのテンポと似ているように思いました。
いつもの表現、単語は少なく、特筆すべきは上杉君のアーヤ呼びです(私見)。
【考察】
・時期は中1の夏休み。7月かなあ。
「小塚君からの電話は、『緑の桜は知っている』の中で、パパが認めてくれたので、ママももうブツブツ言わない。」(P.50、紙P.19)
「『卵ハンバーグは知っている」のころから、若武は身長でからかわれている。」(P.325)
これ↑は後々のためのメモ。
・小塚君
背が伸びたとのこと。(P.323)
・コクン:2回
「私はコクンと息をのみながら」(P.29、紙P.12)
「私は、コクンと息をつめた」(P.86)